2026-06-01 原油が届かなくなるとどうなるのか?

最近のニュースで、中東情勢やホルムズ海峡の話題を目にする機会が増えました。正直なところ、こうしたニュースは少し距離を感じる方も多いのではないでしょうか。

しかし、実は日本ほど中東情勢の影響を直接受ける国も多くありません。日本はエネルギーの約9割を海外からの輸入に依存しています。もしホルムズ海峡が長期間閉鎖されれば、私たちの生活やビジネスは想像以上の影響を受けることになります。

<オイルショックを超える規模の出来事>

1973年のオイルショックでは、世界全体で一日あたり約450万バレルの供給減少が起きたと言われています。一方、今回ホルムズ海峡が完全閉鎖された場合、その影響は一日あたり約2000万バレル。

実に4倍以上です。数字だけを見ると、当時をはるかに上回るインパクトがあります。それにもかかわらず、日本ではまだ比較的落ち着いているように見えます。

私はここについて、現在の日本政府、特に内閣や経済産業省はかなり上手く対応していると感じています。

また、日本企業や国民も、1970年代のオイルショック以降、省エネルギー化を積み重ねてきました。その蓄積が今効いているのでしょう。

<しかし市場は楽観的すぎる>

一方で気になるのは、市場がまだかなり楽観的なシナリオを描いているように見えることです。

海外ではすでに、
 ガソリン利用規制
 航空便の減便
 物流コストの急騰
など、目に見える影響が出始めています。

しかし日本では、その影響がまだ十分には実感されていません。だからこそ逆に注意が必要だと感じています。価格というものは、足りなくなってから急激に動きます。

<世界では資源の争奪戦が始まっている>

中東以外の産油国は、突然発生した需要に対応しようと動いています。
 ベトナム
 インドネシア
 オーストラリア
など、日本に近い資源国でも取り合いの様相が強まっています。

また、最も利益を得ている国の一つがアメリカです。メキシコ湾周辺で生産された原油への需要が急増しています。

しかし、日本がそこから原油を運ぼうとすると大変です。大型タンカーはパナマ運河を通れないため、
 インド洋
 喜望峰
 大西洋
という長いルートを通る必要があります。

中東からであれば20日弱だった輸送期間が、30~35日程度まで伸びてしまいます。輸送コストが上がるのは避けられません。

<良いニュースもある>

もちろん悪い話ばかりではありません。

UAEがOPECプラスから離脱し、ホルムズ海峡の外側に位置するフジャイラ港から輸出能力を高めようとしている動きは、日本にとってプラス材料です。今までの経緯や、過去の取引実績などを見ても日本が優遇される可能性がかなり高いです。

また、日本には200日以上の石油備蓄があります。明日突然ガソリンがなくなるわけではありません。

だからこそ、備蓄がある間に代替調達ルートを整備できるかが重要になります。日本は危機の真っただ中にいるというより、「危機への対応力」が試されている段階にあると言えるでしょう。

<本当に影響を受けるのは誰か>

原油価格は、
 攻撃前 約70ドル
 一時 約170ドル
 現在 約103ドル
という推移を見せています。

落ち着いたように見えますが、それでも攻撃前より大幅に高い水準です。今後、物流費や原材料費を通じて、様々な商品の価格に転嫁されていく可能性があります。

 石油製品
 電力・ガス
 物流
 化学製品
 鉄鋼
 建材
などは直接的な影響を受けるでしょう。

しかし実際には、それ以外の業界も無関係ではありません。
先日、不動産関係者から聞いた話では、建売住宅に必要な部材の供給が止まり、完成まで持っていけない案件が発生しているとのことでした。

影響が少ないと言われる業界ですら、すでに波が押し寄せているのです。

<ピンチの裏側には必ずチャンスがある>

こういう話をすると、どうしても暗い気持ちになります。

しかし経営者として見るべきなのは、「何が不足するか」です。足りなくなるものは価格が上がります。価格が上がるということは、そこに利益機会が生まれるということでもあります。

 代替材料
 省エネ設備
 物流効率化
 国内回帰
 再生エネルギー
 AIによる省力化
これらはすべて、今回の混乱によって需要が高まる可能性があります。
世界が大きく揺れる時代だからこそ、情報収集の差が企業の生死を分けます。
リーマンショックの時もそうでした。
コロナ禍もそうでした。

大きな変化の時には、「知らなかった」が最大のリスクになります。

<最後に>

原油が届かなくなる。それはエネルギーだけの問題ではありません。物流、建設、製造、食品、そして私たちの日常生活まで、あらゆるものにつながっています。

ニュースを遠い国の出来事として眺めるのではなく、「自分の業界にどんな影響が出るのか」という視点で見ることが大切です。

世界が混乱するとき、必ず困る人がいます。しかし同時に、新しい需要も生まれます。変化を恐れるのではなく、変化を理解する。

そして、一社で抱え込まず、情報や知恵を持ち寄りながら乗り越える。

そんな時代だからこそ、BMSのようなつながりの価値が、ますます大きくなっていくのではないでしょうか。BMSの2次会で違う業界の人と、情報交換をするなど企画してみてもよいかもしれませんね。