2025-11-17 中国、ミャンマー、タイの出張で気付いた、日本の立ち位置 ——高市政権誕生がもたらす「反転のチャンス」

【現地で感じたこと――アジアの変化のスピード】

4月に韓国出張に行った後、しばらく国内での業務が続きましたが、9月に中国の上海・杭州、10月にミャンマーのヤンゴン、そして11月の今月はタイのバンコクを訪れ、今まさに帰国便の空港でこの原稿を書いています。
それぞれの国に立ち、日本を離れて初めて見えてくる“現実の温度差”に多くのことを考えさせられました。

9月の中国・上海では、経済の減速が伝えられる中でも、巨大国家としての底力を強く感じました。道路や住宅の区画は日本の比ではなく、都市インフラの規模は圧倒的です。公共事業のスピードと範囲も桁違いで、「既に整備された高速道路の隣に、自動運転専用の高速道路を建設中」と聞いた時には驚きました。
テクノロジーの進化を社会基盤の側から先取りするという発想は、日本にも学ぶ点が多いと感じました。

街中を走る自動車にも変化が見られます。かつては圧倒的に多かった日本車の姿は減り、見たことのない中国製EVが主流を占めています。充電スタンドが至る所にあり、政策と市場が一体となって未来産業を推進している様子が伝わってきました。
一方で、会話の中では不動産市場への不安もよく耳にしました。都市の光と影、繁栄と不安が混在している。そんな中国の「今」を肌で感じた出張でした。

10月のミャンマーでは、さらに強い衝撃を受けました。
2011年に民主化を果たしたものの、2021年の軍事クーデター以降、政治的混乱が続く国。平均年収は約36万円。外資流入も止まり、仕事を求める若者たちが厳しい環境に置かれています。
今回、私は工学系大学や語学学校を訪問し、学生たちと話す機会を持ちました。驚いたのは、日本語を学ぶ学生が非常に多いこと。外国語を学ぶ学生のうち約4割が日本語を選択しており、その理由を尋ねると、「生き延びるため」「日本で働くことが夢」と、真剣な眼差しで答えるのです。
ストリートチルドレンとなった子どもたちの話も聞きました。命の危険と隣り合わせの現実の中で、「学ぶこと=生きる手段」であることを、彼らの言葉から痛感しました。

そして11月のタイ。ここではミャンマーとは対照的に、安定した政治と整った都市インフラが印象的でした。BMSの海外展開を模索する目的で訪れ、現地在住の日本人ネットワークを通じて20名ほどの方々が参加してくれました。
「ここで何かを始められそうだ」と感じるほど、ビジネスの動きやすさを実感しました。
一方で、現地の人々からは「近年の成長率は2%前後に落ち着いた」との声もありました。しかし、その「2%」という数字を語る彼らを見ながら、同じ2%を30年間も達成できなかった日本の政策の停滞を改めて思い知らされました。

【日本の課題――プライマリーバランスの呪縛】

こうしてアジアの現場を巡ってみると、日本がどれほど“動けなくなっていたか”を痛感します。
長年続いた「プライマリーバランス(PB)黒字化」という目標が、結果として国の活力を縛ってきました。国の借金を減らすこと自体が目的となり、投資を控え、挑戦を抑え、未来を先送りにする——。その構図が続いてきたのです。

「借金=悪」というイメージのもとで、公共投資や教育投資が抑制され、研究開発費も削減されてきました。結果として、企業も個人も「挑戦よりも節約」を優先し、日本全体がゆっくりと縮小均衡に陥っていった。
その間、アメリカはインフレ抑制法(IRA)による国家規模の産業支援を行い、中国は政府主導でAI・EV・インフラ投資を加速させてきました。
日本だけが「財政健全化」という名の下で、未来への投資を止めていたのです。

しかし、この10年を振り返ると、国民が貯蓄を増やし、企業も内部留保を積み上げ、政府も財政余力を維持した結果、日本は「跳ねるためのバネ」をしっかりと貯め込んできたようにも見えます。
つまり、備えは整った。あとは放つだけ——そう感じます。

【今後の展望――日本の反転攻勢が始まる】

その“放つ”きっかけとなるのが、高市政権による政策転換です。
高市首相の所信表明演説では、「プライマリーバランス黒字化の一時凍結」とともに、成長のための積極的財政出動が明確に打ち出されました。減税や所得税負担の軽減といった短期刺激策に加え、科学技術・防衛・教育・社会インフラなど、国の未来を支える分野への投資を強化する姿勢が見えます。
これは、30年間続いた「縮み志向」から「伸ばす志向」への大転換です。

私は、今の日本を「長く引き絞られた弓」として捉えています。
財政規律を重んじ、身の丈をわきまえ、慎重に構えてきたその弓が、いま初めて解き放たれようとしている。
エネルギー、AI、再生医療、半導体、観光、農業——。日本が本来持つ技術力と勤勉さ、そして社会の安定性は、世界のどこにも負けません。
それらが「投資」という形で正しく循環すれば、日本は再びアジアのリーダーとしての存在感を取り戻すことができるはずです。

アジアの街を歩くと、変化のスピードと熱量に圧倒されます。
けれども、静かに力を蓄えてきた日本には、また別の強さがある。
節度、誠実さ、継続力。そして、逆境を越えてきた経験——。
それらを武器に、「挑戦する国家」として再び立ち上がる時が来たと感じます。

長年、縮こまってきたバネを解放し、未来へと跳ぶ準備が整った日本。
この反転の瞬間に、私たち一人ひとりがどう動くか。
それが、これからの10年の日本を決める鍵になると、アジアの空港で改めて強く感じています。