2025-10-06 大きな転換点を目の前にして

高市早苗氏が自民党総裁選に勝利し、自民党の新たな総裁に就任することが決まりました。1週間ほどで内閣総理大臣指名選挙が行われ、日本初の女性首相が誕生する可能性が高まっています。

そのためには、連立あるいは閣外協力によって協力政党を確保する必要があり、政治の動向から目が離せない1週間となりそうです。

「政治・宗教・野球の話は人前でしない方が無難だ」という話題が、BMSの幹事会でも出ました。たしかにそういった話題は避けがちですが、以前このコラムでも書いたように、そのような“タブー”を設けて話し合いを避ける姿勢こそが、政治への無関心を生み、結果として30年間の日本の停滞を招いた一因ではないかと考えています。

実は今週は中国出張のご報告をお届けする予定でしたが、それは来週以降に回し、今回はあえて政治の話題を取り上げたいと思います。

高市氏と他の候補者との最大の違いは、積極財政か緊縮財政かという点にあると私は見ています。

「失われた30年」の間、日本は一貫して「プライマリーバランス黒字化」という、いわば「入ってきた税収の範囲内で支出を抑える」という考え方に基づいて政策が組まれてきました。しかし実際には、この黒字化を長期的に達成している先進国は一つも存在しません。にもかかわらず、耳障りの良いスローガンに引きずられて、本来必要であった投資を怠ってきたのです。

プライマリーバランス黒字化は、一見すると健全な財政運営に思えるかもしれませんが、それは「未来のためにお金を使わない」という選択を意味します。家を買うときに全額を現金で用意する人が稀であるように、長期的に価値を生むものには、借入を伴ってでも投資すべきです。住宅ローンしかり、教育への投資しかり——知識という武器を次世代に持たせるための教育費を、OECD平均の半分以下に抑えていて、どうして国際競争力を維持できるでしょうか。

現実として、日本の国際競争力は年々低下しています。これは、そうした予算編成を許してきた私たち有権者の選択の結果であり、責任を他に転嫁することはできません。

とはいえ、やり直しが可能なのが民主主義の良さでもあります。

今回、これまでの緊縮財政路線を否定し、積極財政への転換を掲げる高市氏が総裁に選ばれたことは、大きな転換点と言えます。しかもそのタイミングで日本初の女性首相が誕生するかもしれないという象徴的な節目を迎えている。ぜひこのまま、積極財政の方向へと舵を切っていただきたいと願っています。

ただし、方向転換には「慣性の法則」が働きます。30年間染み付いた緊縮財政という慣性力は凄まじく、高市氏が進もうとする道は、間違いなく茨の道でしょう。「仕事をする」と何度も繰り返した新総裁の挨拶からは、その覚悟が感じられました。

この「慣性」は、これまで緊縮財政を肯定的に報道してきたメディアにも作用します。今後、ネガティブキャンペーンが激しくなることも想定されます。せっかく動き出した方向転換の流れを、自ら梯子を外すようなことにはしたくないものです。

もし積極財政を軸に連立相手を探すとすれば、国民民主党、れいわ新選組、参政党あたりが候補になります。加えるなら日本保守党やチームみらいも選択肢として挙がるでしょう。ただし小選挙区での対立構造を考えると、公明党との連立を優先する限り、他党との連立は難しく、是々非々の閣外協力が現実的な落とし所といえそうです。

いずれにせよ、大きな転換点を迎えた今は、冷静に全体を俯瞰する好機でもあります。政治が「お金の流れ」を大きく変えるタイミングは、私たちにとってビジネスの方向性を見直す絶好の機会でもある。積極財政の波にうまく乗ることができれば、事業もまた成長のチャンスを迎えることでしょう。

「幸運の女神には前髪しかない」と言います。流れを見誤らぬよう、政治の動きにも目を凝らしていきたいと思います。

30年間にわたり投資という当然の行為を怠ってきたこの国が、今後、正常な予算編成を行うようになれば、押し込まれていたバネが一気に跳ね返るように、高圧経済による成長軌道に乗ることも夢ではないと私は考えています。そのためにも、「政治に無関心なふり」をやめ、積極的に議論し、情報を取りにいく姿勢が大切です。

今回はその一助となることを願って、あえて政治をテーマにコラムをお届けしました。