2025-08-04 消費税は誰のための税か? –消費税という静かな再分配装置–
5月末決算の会社を経営しているため、7月末が消費税の納税期限で、年貢の納め時とばかりに納税してきました。
「売上はそれなりにあるのに、なぜか手元に現金が残らない。」経営者仲間と話していると、こんな嘆きを耳にすることがあります。ご多分に漏れず私もその一人です。特に中小企業では、売上の規模に比べて資金繰りが常に厳しいという声が後を絶ちません。もちろん、取引先からの入金サイトの問題や、仕入れや人件費の先払いといった要因もありますが、今回はこの消費税というものについて、考察を深めてみようと思います。
消費税は、買い手である消費者が負担し、売り手である事業者が納めるという少し変わった仕組みになっています。表面的には「みんなが公平に支払っている税金」のように見えますが、実はその裏には、あまり知られていない“還付”という仕組みが存在します。
2022年の消費税の納税額は23兆円弱ですが、還付額が7兆円を超えています。つまり広く薄く徴収された消費税のうち、全体の約3割が納税ではなく“払い戻される側”に流れている構造です。
たとえば、製造業などで海外に商品を輸出する企業の場合、輸出は「消費が国内で行われない」という理由で消費税がかかりません。そのため、製造に必要な材料の仕入れなどで支払った消費税分が、国から全額「戻ってくる」のです。これを“輸出還付金”と呼びます。
ここで一つ私の知っている事例を出すと、パキスタン人の友人が日本車の輸出業を営んでおり、その利益はほとんどがこの輸出還付金だと言っていました。お酒の席で「難しいことは考えず、仕入れ額そのままで輸出したとしてもこの還付金はまるまる利益となるよ。君はいつも難しく考え過ぎなんだよ。」とアドバイスをいただきました。
この制度そのものは国際的にも一般的な仕組みですが、問題はその規模と集中の度合いです。消費税として集められた税収のうち、年間7兆円超が還付金として企業に戻されており、そのうちの多くが輸出企業、特に一部の大企業に偏っているという事実があります。事実上の輸出補助金となっています。そりゃ、トランプさんが怒るのも仕方ありません。
つまり、消費者が支払った消費税の一部が、最終的に大企業に“返っていく”構造ができあがっているのです。これは見方を変えれば、消費者から企業への間接的な資金移転だと言えます。実際、中小企業の利益率と、大企業の利益率には大きな差があり、その差の原因の一つだと私は考えています。
こうした消費税の構造によって、特定の企業には資金が集まりやすくなっている一方で、そのお金が社会全体にどう還元されているかとなると、話は別です。
そして実際、大企業の内部留保は年々増加し、現在では500兆円を超える水準に達しています。株主への配当も過去最高を更新し続けており、「企業は儲かっている」というイメージが数字の上では確かに見て取れます。
ところがその一方で、企業の利益が従業員や地域社会にどれだけ還元されているかというと、決して十分とは言えません。たとえば、労働分配率――企業が得た付加価値のうち、どれだけが人件費として使われたかを示す指標は―(2020年度75.4%、2021年度73.2%、2022年度72.4%、2023年度69.1%、2024年度53.9%)―と年々低下しています。利益は出ていても、賃金には反映されにくくなっているのです。
特に中小企業では、原材料費の高騰や人件費の上昇に直面しながらも、価格転嫁が思うようにできず、賃上げの余力は限られています。収益が拡大しているからといって、それが自動的に従業員や地域に還元されるとは限らない。これが今の日本経済の現実だといえます。
こうした制度の仕組みと、現実の分配構造を見ていると、私たちはある問いに向き合わざるを得ません。
果たして今の税制度は、本当に公正と言えるのか。
単に「いくら支払ったか」だけでなく、「誰がどのように負担し、そしてその税金がどこへ流れているのか」を考える視点が、必要だと思います。特に消費税のように、一見すると公平に見える仕組みであっても、その実態には偏りがあり、構造的な格差を助長している面も否めません。
もちろん、制度のすべてを一企業が変えることはできません。しかし、そうした現実を知ったうえで、経営者としてどう行動するかは選ぶことができます。
私たち中小企業の経営者が現状に正しい認識を持ち、持続可能な経済循環を形にする。そのための知恵と連携こそが求められているのだと考えています。このBMS会員向けのコラムがそのための一つのヒントにでもなれば幸いです。
